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ボルト締結構造のモデル化に関する話題です。 |
<ボルトの初期締め付け力(軸力)の与え方について教えて下さい>
# 2000年6月16日 # SHU #
>par5さん
(軸力を熱ひずみで与える手法がある)
「熱ひずみ」の件についてもう少し教えてください.
「ボルトの軸力を,それに相当する熱ひずみ(熱応力?)に置き換えられる様な温度を設定して,LinearStaticで解析を行う」と理解したのですが,これであってますか?
具体的な作業としては,
ε=α*⊿T
ε:熱ひずみ α:(ここではボルト材の)熱膨張係数
⊿T:上昇温度(例 室温:30℃-ボルトの温度:10℃)
として,熱ひずみの計算を行う.
次に実際のモデルで解析を行う.境界条件では,先ほどの温度(室温:30℃-ボルトの温度:10℃)を設定する.
その解析結果から得られるボルトの部分の応力と,軸力が等しくなるように温度を変更する
...と言う事でしょうか.
しかし,この作業では手計算する意味がないので,間違っている様な気がします...
この部分の手順を,教えていただけないでしょうか.もしかして,前準備として手計算か解析で,何かパラメータを求めて,それをビーム要素で作成したボルトの材料(物理)特性の何かのパラメータに代入するのでしょうか?
# 2000年6月16日 # par5 #
>しかし,この作業では手計算する意味がないので,間違っている様な
>気がします...
手計算とは、SHUさんの書かれているように、
F(軸力)=A*E*α*⊿T
A(断面積),E(ヤング率)
で計算しています。
手計算する理由はある程度近い温度差で始めないと、接触が入って非線型なので(ハッピーさんへの回答、IdeasはなぜかLinearStaticに接触があります)
釣り合いをもとめる解析回数がふえるからです。
# 2000年6月17日 # ハッピー #
>手計算する理由はある程度近い温度差で始めないと、
>接触が入って非線型なので(ハッピーさんへの回答、Ideasはなぜか>LinearStaticに接触があります)
by_par5さん
なるほど接触問題ですか。これがLinearとは困ったもんですね。
ボルト締め付け力のモデリングおさらいコーナーです。
話を簡単にするために、まず円筒にボルトを通して軸力F0でナットで締め上げる場合を考えます。ナットが軽く円筒に当たった時が締め上げるスタート時点です。
***が円筒、===がボルトです。円筒の長さをLとします。
||**************||
||==============||_長さL(締め上げる前)
||**************||
ここから締めあげて行って、ボルトの軸力が所定の値F0になったときの円筒の長さを
L0=L-Δaとします。
||************||
||============||_長さL0(軸力F0で締め付けた状態)
||************||
ここで、L0=L-Δa
当然、ボルトには引っ張り力がかかっていますから、仮にナットの位置をボンドで固定して円筒を割るなどして除去するとボルトは縮んで、
自由長L'=L0-Δb=L-(Δa+Δb)となります。
||
||==========||_長さL'(これがボルトの自由長)
||__________||
ここで、L'=L-(Δa+Δb)
円筒、ボルトをそれぞれバネ定数Ka、Kbのバネと考えると、締め付けた状態では円筒は自由長=LからL0まで縮んでおり、その圧縮加重はFa=Ka×Δa。一方、ボルトは自由長=L'からL0まで伸ばされていたことになり、その引張り荷重は、Fb=Kb×Δb。
当然、Fa=Fb=F0です。
(言うまでもありませんがボルトのバネ定数はKb=E×Area/Lで求められます)
「軸力を熱歪みで与える」というのはボルトをLからL'まで(Δa+Δb)だけ熱収縮で自由長を変化させるということですネ。つまり必要な温度変化は、
ΔT=(Δa+Δb)/(α×L)、ここでΔa=F0/Ka、Δb=F0/Kb。
円筒が剛体であれば、Δa=0ですから、
ΔT=Δb/(α×L)=F0/(α×L×Kb)=F0/(α×Area×E)
で求められますが、円筒が弾性体のため力の一部が逃げてしまうのがポイントです。
所定の軸力を生じさせるための熱歪み量は、締め付け側と締め付けられる側の剛性(バネ定数)によって異なった値となるわけですネ。
この例のように、締め付けられる側が円筒のような単純な形状ではKaを簡単に求める事ができ、必要な温度変化量も一発で(接触などの非線型性が無い場合)求められますが、通常締め付けられるのは板材などで、その有効なバネ定数を簡単に見積もれません。
(エイヤっと等価な円筒を仮定する事はありますが)そのため、まず適当なΔT1を与えて計算し、その時にFEMから得られるボルトの軸力がF'であったとすると、次は比例計算でΔT2=ΔT1×F0/F'を温度変化量として再度FEMを実行すれば、バッチリの軸力が得られるという寸法です。勿論、最初のFEMの結果から締め付けられる側のバネ定数Kaを算出する事が出来ますから、以後はこれを使うと一発回答です。
par5さんのような非線型問題では比例計算が成り立ちませんから、試行錯誤を行って軸力がF0になるまで繰り返すわけですが、その最初の第一歩として、締め付けられる側を剛体と見なした場合のΔTを使っておられるわけですネ。
#くどい割に分かり難い説明でスミマセン。もっと分かりやすい説明方法があったかも。
# 2000年6月19日 # ハッピー #
ボルトの初期締め付け力のモデル化について、熱歪みで与えるよりもっとストレートで分かりやすい方法が(ソフトによっては)あります。
Marcには節点間の変位を線形式で拘束するTying機能があり、これを解析ステップ毎に変更する(TyingChange)ことができます。ボルトを梁でモデル化し、梁を適当なところで分断しておきます。ボルトの要素を、a1-a2、b2-b1とし、a1、b1が座面の節点、a2、b2が分断された節点です。
最初の締め付けステップで、a2に右方向、b2に左方向に締め付け力F0を加えます。するとボルトは分断された両側とも伸び、締め付けられた板は縮みます。この後、TyingChangeによりa2、b2の以後の変位増分を等置する条件式を新規に設定します。いわば、紐を引っ張って結ぶようなものです。これで、所定の軸力による締め付けが完了です。
この方法の有難いのは、試行錯誤が不要なのは勿論ですが、熱応力解析でも悩むことがない点です。
(ボルトをソリッドでモデル化した場合でも使えます)
AbaqusではTyingChangeに相当する機能はなく、ちょっと気が付き難い方法。
モデル化は同じですが、a2とb2の相対変位を表す仮想的な点cを用意し、拘束条件式を最初から与えます。Uc=Ua-Ub。この状態で、同様にa2、b2に軸力荷重を加えます。Abaqusには、新たな解析ステップに入るとき、前ステップの変位をキープ(Fixed)すると言う機能がありますので、このUcをキープします。これでMarcと同様に紐を結ぶ事が出来ます。個人的にはMarcの方が断然分かりやすい。
Abaqusはこれじゃいかんと思ったのか、「*PreTension」という正に初期締め付けのコマンドを追加しましたが、要するにここに書いた手順をちょっとPackingしたものです。
ユーザーが仮想点cを定義する必要があり、またUcをキープさせるコマンドもユーザー入力で、結局自動化しているのは拘束条件式だけです。さらに軸力の入力は仮想点に対する集中荷重として与えるという意味不明の仕様。
どうも中途半端な感がぬぐえません。ユーザーに中身を見せまいとする姿勢がネ
I-DEASにこれらと同様の機能があればそちらを使われる事をお勧めします。
# 2000年6月19日 # par5 #
(ABAQUSでは)直接軸力を入れることができるのですね!
ABAQUSはよく使うのですが、マニュアルが古くて*PreTentionがありませんでした。
いままで、PreStressでやはり繰り返し計算していたのでたすかります。しかし残念ながら、Ideasには直接入れる機能はなさそうです。
# 2000年6月19日 # ハッピー #
正確には、*PRE-TENSION_SECTIONです
確か、Ver5.6当たりで加わった機能だったと思います
# 2000年6月21日 # par5 #
Ideasで行うにはハッピーさんの案のようにボルトの中間にノードを作成して最初にこの2点に軸力分の荷重を与えて変位をもとめ、次にMPCでこの変位分拘束すれば良さそうな気がします。
# 2000年6月21日 # ハッピー #
ところでIDEASでの実現方法ですが、
>作成して最初にこの2点に軸力分の荷重を与えて変位をもとめ、次にMPC
>でこの変位分拘束すれば良さそうな気がします。
by_par5さん
具体的には、まず予備解析として、前に書いたモデル化でF0で互いに逆方向に引っ張り、
>ボルトを梁でモデル化し、梁を適当な
>ところで分断しておきます。ボルトの要素を、a1-a2、b2-b1とし、
>a1、b1が座面の節点、a2、b2が分断された節点です。最初の締め付け
>ステップで、a2に右方向、b2に左方向に締め付け力F0を加えます。
>するとボルトは分断された両側とも伸び、締め付けられた板は縮みます。
この時のa2とb2の相対変位をΔu0とします。
次いで、本解析では、
>a2とb2の相対変位を表す仮想的な点cを用意し、
Uc=Ua-UbよりUb=Ua-UcというMPCを定義(UbがSlave)し、その上で、点cに対し強制変位として予備解析で得られたΔU0を与えればOK
ですね。ここで、Ucを左辺(slave側)から右辺(master側)に移項するのは、slave点には強制変位を与えられないから。
# 2000年6月21日 # ハッピー #
うちの場合、ボルト締結構造の圧力容器を解析することが多いんですが、
常温で締め付けた後、高温高圧のガスを充填すると...
内圧&熱変形でフランジが広げられようとしてボルト軸力は増加する一方で面圧は低下。
一方で、ボルト材の線膨張係数が小さい場合は温度上昇によって逆に面圧が上がったり。
さらに、座面が降伏したりボルトがクリープして面圧が低下したりと、もう何が何やら
>1.ボルトの締め付け力がばらついてる
byよし☆彡さん
ボルトの締め付け力って、締め付けトルクで管理すると結構ばらつくんでしょう?
要するに、摩擦係数をどう見積もるかで全然違ってしまう。また4本のボルトを少しずつ順番に締めていくか、能率を上げようと一度に多く締めようとすると摩擦力が大きくなっててきめんにバラついたり。
ずぅ~っと前に車雑誌で読んだ話。エンジンのシリンダヘッドの締め付けをするのに昔は弾性範囲でトルク管理でやっていてバラツキに悩んだので、「塑性域角度法」だったか、中身はさっぱり覚えてませんが、降伏させるのを前提とした絞め方にして締め付け力が安定したというようなのを見たような。クルマ業界の方がおられたら訂正お願いします。
# 2000年6月22日 # DMS #
ボルトの締結関連の話が出たので、割り込ませてもらいます。
少し前に、ヤマハのオートバイの組立てを手伝った時のことです。
クランクとコンロッドのボルトの締結力の管理に、「ボルトの伸び」を使っているのを初めて知りました。
ボルトを締付ける度にマイクロメータで伸びを測るのは面倒ですが、締結トルクよりも確実な方法に感心しました(ボルトは機械加工で特殊なネジを切っているので、断面積のバラツキは少ないと思います)。
ネジの締結に詳しい方には常識なのかもしれませんが参考までに。
# 2000年6月24日 # ハッピー #
前に、直径70センチ、長さ15m程のボルト・ナットを締め上げましたが当然軸力はボルトの側面に普通の歪みゲージをベタベタ貼って測りました。とても長さの測定は出来ませんでしたから
# 2000年6月27日 # DMS #
ボルトの伸びで締結力を測定した時の話ですが、伸びを一定にすると締付けトルクは10%以上ばらついたと記憶しています。作業は大変でしたが、思わぬところで締結力の管理を肌で感じることが出来て面白い体験でした。
(編集担当:Happy 2001/12/22)
<台板を固定するボルトの強度評価について教えて下さい>
# 1998年9月2日 # 管理人 #
太めのボールが板の固定されています。(とりあえず一体とする)
この板は土台に数箇所ボルトで締結されています。ボルトのネジは土台と噛み合っています。
さて、このポールの先端に横荷重をかけた際、板が起き上がる形となりボルトが引き抜かれるような力が発生します。
ここでボルトの強度を評価したいわけですが、ボルトネジ部と土台ネジ部が破壊するモードとなります。このような場合どのようなモデル化が適切かアドバイスをお願いします。
# 1998年9月2日 # Gan #
文字の説明だけでは、良くわからないのですが、私の考えを書きます。
①まず、全体のラフモデルを作成します。二次元でも、3次元でもOKですが、きっと私なら、3次元で作ります。
②そのモデルに対して、荷重条件、境界条件等を設定して、解析します。
③この解析の結果から、そのボルトにかかる力を求めます。
④次にボルトを詳細にモデリングします。
⑤そうすれば、詳細モデリングは、ボルトだけでOKでしょう。
逆に質問ですが、ボルトのどの部分が弱いかとかを調べるんですか?単に強度だけであれば、④⑤は、必要ない?
また、ボルトには既に締結の為の応力が発生している訳ですから、この分も考慮する必要があります
# 1998年9月3日 # 管理人 #
Ganさん、早速のResありがとうございます。
私も2段階の解析を計画しています。
>③この解析の結果から、そのボルトにかかる力を求めます。
ここのところで、私も引っ掛かりました。つまり、板と土台は弾性体のボルトのみで固定されていますので、板と土台は全面固着としてはいけないはずです。従って、ボルトに相当する部分を拘束するか、ボルトを模倣した円柱部材をモデル化するか?
といった考えが浮かびます。
評価方法として、確かにボルトの詳細モデルは必要ないかも知れません。
ボルトに発生する軸力の様なものが推定できれば、「設計工学」の教科書に
ボルトの強度が載っていたかもしれません。(ちょっと自身ない)
# 1998年9月3日 # Gan #
ボルトでの拘束についてですが、私の分野ではボルトって言う太いものはあまり扱っていませんが、ネジって呼ばれるもっと細いもの(φ1.7~φ3)は、普段使用しています。
ある板状の物をこれで拘束する場合、私はネジをモデリングしないで、拘束条件として入れています。即ちこれで固定する部分をパーテーションで分けて、両面ともボルトが抜ける方向をZとするとZ完全拘束、X、Y方向にずれる場合は、軸と穴のガタ分だけ自由度を与えます。
(完全拘束している場合も多い)
これで解析すると当然拘束している周りに応力が発生します。これを利用して判断しています。
ボルト、ネジの強度については、JIS B 1051に書いてありますし、ネジ総合カタログにも載っていますが、各強度区分の最小値が載っているだけなので、これで判断するのが適切かどうかは、わかりません。どなたか、ネジ関係の方がいましたら、教えて欲しいです。
(編集担当:Happy 2001/12/22)